ワイヤレスイヤホンでPC/PS4ゲームを遅延なしで楽しむ
遅延にこだわるFPSゲーマーにはワイヤレスなど無縁な話であったが、最近ではワイヤレスマウスがプロのFPS競技シーンで最も人気があったりと、かつての常識は覆されつつある
現状、遅延にこだわるゲーミングデバイスの中でワイヤレスが主流なものはマウスのみだが、キーボードやヘッドセット、イヤホンにもワイヤレス化の流れは来ている
当記事ではゲーミングイヤホンについて筆者がワイヤレス化に挑戦した結果を取り扱う
規格を学ぶ
はじめに、知っておかないといけないのがワイヤレス通信における規格
といっても今回学ぶ必要があるのはBluetooth,Wi-Fiなどに代表される無線通信自体の通信規格と、
sbcに代表される符号化を行って音声データのエンコード/デコードを行う規格の2つです
特に、後者のエンコードとデコードの過程において大きな遅延が生じるため、重要なのは後者と言えます
Bluetooth
現状のPC周辺機器における無線通信の規格はBluetoothが最も一般的で、性能的にも優れているといえます
バージョンによる差異は以下の表に示します
Bluetoothバージョン | 通信範囲 | 通信速度 | 転送速度 |
4.1 | 10m | 260kbps | 1Mbps |
4.2 | 10m | 650kbps | 1Mbps |
5.0 | 100m | 650kbps | 2Mbps |
このようにBluetooth5.0が最新で最も優れた規格となりますが、音声通信程度のデータ容量でこの規格を最大限に使うことはないと思います…
Bluetoothには後方互換性があるため、BT5.0は4.2やそれ以前の規格にも対応していますが、相性的な問題でノイズなどが発生してしまう場合もあるようなので、受信機(レシーバー)と送信機(トランスミッター)で同じバージョンを用意してあげるのが音質的には最も良い結果が得られるのかもしれません
音声データのエンコード/デコード規格
現状の最上位規格はaptx HDおよびLL(Low Latency)の2つです
ワイヤレスで快適にゲームを行いたいならaptX LL一択です
規格 | 音質 | 遅延 |
SBC | CD音源相当 | -220ms程度 |
AAC(iPhoneなど) | CD音源相当 | -120ms程度 |
aptX | CD音源相当 | -70ms程度 |
aptX HD | ハイレゾ音源相当 | -70ms程度 |
aptX LL | CD音源相当 | -40ms以下 |
注意してほしいのはaptX LLが最大でも40msまでの遅延しか生じさせないという点です
ここで1フレームは16.7ms(60fpsの場合)であることを考慮すると最大でも2.5フレーム程度の遅延に収まるといえます
今回買った機器
イヤホン:
Bluetooth5.0/aptx LL対応
トランスミッター:
Bluetooth2.1+EDR/aptx LL対応
計測
そんな理論的なことよりも実際どうなんだ!
ということで最も遅延にシビアなPCの音ゲーであるosu!を利用して遅延の計測を行いました
入力にはLogicool G703hとCorsair K65(赤軸)を使用
BTトランスミッターはCreative BT-W2を使用
有線の場合と無線の場合でどの程度ゲームプレイに影響があるのか調べました
サウンドカード | イヤホン | |
検証セット① | Sennheiser GSX 1000 (7.1ch不使用) |
Sennheiser IE 40s |
検証セット② | 無し | Shure SE215-SPE-BT2 (Bluetooth aptX LL接続) |
結果
検証セット① | 検証セット② | 体感遅延 ②-① |
|
課題曲①(AR8+DT) | avg : -12.66 ~ +8.26ms (-2.2ms) |
avg : -12.89 ~ +11.00ms (-0.945ms) |
1.255ms |
課題曲②(AR9) | avg : -14.29 ~ +6.27ms (-4.01ms) |
avg : -8.05 ~ +9.73ms (+0.84ms) |
4.85ms |
課題曲③(AR9.8) | avg : -8.17 ~ +9.08ms (+0.455ms) |
avg : -5.75 ~ +9.06ms (+1.655ms) |
1.2ms |
課題曲④(AR10) | avg : -8.49 ~ +7.15ms (-0.67ms) |
avg : -7.65 ~ +8.31ms (+0.41ms) |
1.08ms |
※AR(Approach Rate)というものは楽曲のノーツが出現してから消える速さで、スマホの音ゲーでいうノーツの流れてくる速度という認識で問題ありません
※オフセット機能は一切いじっていません
まとめ
最大で40msの遅延まで許容されるaptX LLですが、今回の実験においては最大でも4.8ms程度で、240fpsモニターにおける1フレーム程度の遅延(=4.2ms)程度であるため、遅延を体感するのは難しいと考えます
正直多少の遅延は覚悟していたのですが、全く感じないレベルで遅延は少ないというのは驚いています今回はイヤホンですが、ヘッドホンの場合でも同様に使えると思われます(ただしマイク出力は不可?)
トランスミッター(送信機)はいろいろ種類がありますが、安物はうまく接続ができなかったりノイズが乗りやすいなどありますので、あまり妥協すべきではないです
以下におすすめのトランスミッターを載せておきます(aptX LL対応)
ちなみに現状では多くのサウンドカードの出力はAUX 3.5mm端子ですまた、aptX LLでは遅延を極力減らすために一方的な受信のみなため、マイク出力は行えませんAUX 3.5mm出力対応のaptX LLトランスミッターを買って、サウンドカードに噛ませて出力することも挑戦したのですが、使用したトランスミッターではShure BT2を認識できず使えませんでした
そのうちaptX LLに対応したサウンドカードが普及してくると思いますので、そこからゲーミングイヤホンもワイヤレスの時代が来るかもしれませんね
ちなみにCreative社(Sound Blaster)から出てるには出てるんですが非常に高いのであまりおすすめはしません
→aptX LL対応サウンドカード(Amazon)